今年度、本研究室からは11編の修士論文が完成しました。学会発表が熟れてしまい、考察を長く(冗長でなく)書くことができないのではないかと思ったりしています。以下、指導した要点を残しておきます。
学術論文における「考察」は、研究成果の意義や新規性を示すうえで極めて重要な部分である。とりわけ、「研究を仕事としながら研究を進める」立場の方々にとっては、実務と学術的探究の両立が容易ではない場面も多い。しかしながら、研究全体を統合し、本来の目的や社会的・学術的価値を示すためには、考察を丹念に構築することが不可欠である。
ここでは、学術論文の考察を執筆する際の基本的な流れと、内容をさらに深めるための3つの視点を整理して提示する。以下で示すポイントを踏まえることで、論理的かつ説得力のある考察を書く一助となれば幸いである。
はじめに、研究を通じて得られた中心的知見を簡潔に示す。たとえば、以下のようにまとめるとよい。
「本研究では〇〇を明らかにし、主な知見として△△が得られた。」
この段階では結果の骨格を端的に示すことに留め、過剰に詳細を述べる必要はない。考察セクション全体の見通しを良くし、読者に「どのような結論を得たのか」を最初に把握させる役割を担う。
次に、自らの研究結果を先行研究や既存文献が示す知見と対比しながら、互いの関係性を考察する。同様の結果が得られている場合は、その一致点にどのような学術的意味があるのかを示し、異なる結果を示す場合には、研究デザインや対象者の属性、使用した手法などの要因を検討する。
かくして、先行研究との比較を通じて、本研究がどのような位置づけにあるのかを明確化し、その独自性や学術的貢献を読者に示すことが望ましい。
先に示した結果や、先行研究との比較を踏まえ、本研究の知見がいかに学術的意義を持ち、また現場や社会に応用しうるかを論じる。以下のような観点が考えられる:
結論として、「なぜこの結果が重要であるのか」を論理的に述べることで、研究成果の活用範囲と潜在的価値を明確化することが求められる。
どのような研究にも方法論上の制約やサンプル数・分析期間などにおける限界が存在し、それを正直に明示することは研究の信頼性を高める行為となる。
これらの課題を踏まえたうえで、
「本研究結果の解釈には一定の注意が必要であるが、それでも〇〇の示唆が得られた」
と書き添えることで、過度な一般化を避けつつ、発見の妥当性を担保しようとする姿勢を示すことができる。
最後に、以上の考察を踏まえて「今後どのように研究を発展させるか」を展望する。具体的には、以下のような議論が望ましい。
追加的研究・追試の必要性
本研究で示された一部の知見を検証するために、さらなる大規模調査や別の対象集団での再現可能性を調べるといった具体案を提示する。
臨床応用に向けた課題
本研究成果を実際に現場へ導入するにあたり、どのような条件整備や制度設計が求められるかを論じる。
学位論文等における研究者としての展望
将来的にどのような研究を計画しているのか、あるいは社会実装を見据えてどのような形で貢献しうるか。研究者としての姿勢を示すことで、学術コミュニティや社会に対して研究の継続的意義を訴求できる。
ここでは社会人として研究をする人でなく、研究で生計をつまり、「研究と業務を並行して進める」方々が考察をより深めるために、特に意識すべきポイントを挙げる。
学術論文における考察を書く際の基本的な流れと、内容をさらに発展させるための視点を概説した。「主な結果の要約 → 先行研究との比較検討 → 研究の臨床的/学術的意義 → 研究の限界 → 今後の展望」という骨組みに沿って論理を展開することで、論文全体のわかりやすさと学術的妥当性が向上する。
加えて、研究と実務の両立が求められる環境下では、限られた時間のなかで「なぜそうなるのか」「どう活用できるのか」を追求し、研究の新規性と意義を示す努力が一層重要となる。学位論文であればなおさら、研究者としての視座を明確に示す機会でもある。今後の研究活動に少しでも資することを願いつつ。。
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