JST-CRESTとANR(フランス国立研究機構)とのジョイントによる日仏合同研究として進めているNARRABODY「Narration incarnée : mécanismes neuro-cognitifs et application à la réhabilitation par réalité virtuelle」に関する約28時間にわたる議論終了(リヨン大学病院・INSERMとESC・フランス高等師範学校デカルト館)。なかなかタフな毎日でした(毎日、おおよそ8時間議論後、3時間のディナーでの議論)。デカルト館で自己意識についてトーク・プレゼンすることになるとは、貴重な体験でした。
風邪症状をおして出張したため、私の声が出しづらくなる(今も継続)というハプニングもありましたが、Rodeからは薬をRossettiからは彼のお父さんがつくっている蜂蜜や彼の手作りの松の実のリキュールをいただくなど、彼らの優しさに触れることができました(OsiurakにPisellaも優しかった) 。また、毎日彼ら(若手でなく彼ら)に車でディナー会場に送ってもらうなど、改めて、人は優しくあるべきと、再認識できました。
3日間でRossetti(神経科学)、Rode(リハ医学)、Roy(現象学)と延べ28時間ほど一緒にいて、共通の科学・臨床、そして文化についてコミュニケーションをとりながら、互い性格を知り合えたことは、今後の臨床や研究をする意味で価値のある出張となりました。Rodeは欧州リハ医学会会長を歴任した人物ですが、「ジル」「シュウ」とファーストネームで呼び合える関係を構築できたことは、今後ポスドクや院生等の往来の意味でとても大きいと考えています。また、Luauteとも会うことができ、日仏合同研究のinclusion and exclusion criteriaを話しあえたことも、リハビリテーション研究者として価値ある出張でありました。そして、Royのコントロールのおかげで、日仏で共通の質問紙のある程度の合意形成に至ることができました。
医師、療法士、心理士、研究者等垣根なくふらっとな立場(互いにタメ口で話す)で、かつ患者の病態を細かく調べる上で、病院と研究機関が同じ建物の中に存在(置いている機器は普通)し、互いにイカ(現象)の情報を討論しつづける環境をみると、「一例報告であっても価値ある研究論文になる(臨床的価値)」と思いました。例えば、病態失認の一例に対してさまざまな観点から計測を一緒に繰り返し、その問題に迫る。その際、大事なのは、ただ運動させた際に計測するのではなく、様々な環境を変え課題を変化させ情報間の一致・不一致を繰り返しながらその問題にチームで迫っていく。これはヨーロッパの神経学の紛れもない系譜であり、我々が本来やるべき仕事でもあります。彼らの症例報告をきくと、日本の神経学とリハ医学はなぜコラボできないのか?と少々辛くなります(ヒエラルキーやカテゴライズ化)。そして、日本はスルメ(加工数字)に興味(知識を得る)を持つ人が多い。そうではなく、動く対象をみながら互いに現象に驚くことを喜びにしたいですね。
フランスでも今回の日仏合同のグラントは政治的にもとても大事なようだったようで、3日間、食事代ゼロの出張となりました。美食の街で、ボキューズ関連のレストランも含め、すべてタダ飯(Bulle、Brasserie Georges、Marguerite)になる経験はある意味貴重でした。
現在フランス留学中の同僚にもあうこともできました。彼からは、彼がJSTパリ事務所所長と話した情報をいただきました。日仏マッチングファンドでの採択は、かなり高倍率で昨年度CREST全領域では、我々のプロジェクトのみが採択された様子で、JSTパリ事務所にとっては貴重であるため、今後は現地でのワークショップ開催等の企画も考えられる様子。
これから5年相互に往来しながら、神経科学-哲学-リハ科学の創発を起こしながら、人間にしかできないテーマを一緒に考えていくことができれば。来年は日本で。